気功サロン推薦図書（54）
　　「健康と食べ物　あっと驚く常識のウソ」　ウード・ポルマー　スザンヌ・ヴァルムート共著

　科学的な証明とは、まず推論をたて、実験をすることで、その正しさを証明するというやり方です。だから科学者（実験者）は、自分の推論どおりの結果が出ることを期待するわけです。
　ところが、たまに期待どおりの結果が出ないどころか、予想とは全く反対の結果が出てしまうという悲劇的な結末を迎えることもあるのです。
　本書にある「ベータカロチンは喫煙者の肺がんを予防するか？」という問いに対する実験「フィンランド研究」がその良い例です。
　タバコががん（特に肺がん）の原因になることは医学の常識になっています。これは疫学的に証明されている事実です。喫煙者の血液中のベータカロチンの値が低いというのも事実です。ベータカロチンはビタミンAに転換されるだけでなく、酸化（体がサビること）の防止にもなるのです。ちまり健康にはとても良い物質なのですね。
　そこで医学者たちは、喫煙者にベータカロチンを投与すれば、肺がんになるリスクを減らせるのではないか、と考えたのも納得がいくのです。
そしてこの推論を証明するために行われたのが「フィンランド研究」です。
　この研究（実験）には3万人の喫煙者が参加しました。参加者たちは8年間、ベータカロチン、ビタミンE、プラセボのグループに分けられたのですが、肺がんで死亡したのはベータカロチンを摂取した人のほうが、他のグループよりも18％も多かったのです。
　またアメリカでの実験でも同様の結果が得られたのです。こちらの研究は予定より早めに打ち切られました。なぜなら、ベータカロチンとビタミンAを摂取したグループのほうが、プラセボのグループより肺がんにかかる率が28％多く、寿命も17％低下したからです。う～ん、人間の体は複雑で、推論どおりには行かないようですね。
　この他本書では、健康や食べ物、栄養などに関して、世間の常識と思われている課題に疑問を投げかけています。