気功サロン推薦図書（71）
　　「複製されるヒト」　リー・M・シルヴァー著

　害虫に強いトウモロコシやじゃがいも、トマト。また特定の除草剤で枯れない大豆やなたねなど、野菜をはじめ植物の世界では遺伝子組み換え食品が出回っています。
　またゲノム編集によって、肉厚のマダイやトラフグなども作られています。
　遺伝子組み換えやゲノム編集とはちょっと違いますが、遺伝子操作の観点からクローン技術が話題になっています。1996年、哺乳類初のクローン羊のドリーは有名ですが、わずか6年で死んでしまいました。まだまだ改良の余地があるということでしょうが、ヒトでも実現できることは分かっています。
　出生前診断で妊娠中の胎児の遺伝子を調べることで、ダウン症など遺伝的病気の有無が判断できるまでになっています。この程度ならいいのですが、遺伝的に良い部分だけを取りそろえたデザイナーズベイビーとなると、社会的にとても大きな問題をはらむことになるでしょう。

　話はちょっとそれますが、今アメリカはいくつかの問題で分断しています。その一つが妊娠中絶の是非についてです。
　福音派と呼ばれるキリスト教保守派の人たち（主に共和党支持）は、精子と卵子が出あって受精した瞬間に新しい命が生まれたと考えるわけで、この人たちは中絶絶対反対なわけです。殺人と同じだと言うわけです。
　それに対して、レイプや望まない妊娠に対して中絶の必要性を訴える現実派（主に民主党支持）は中絶のために、それが可能な病院に駆け込むわけです。そこには中絶反対のプラカードを持った人たちがそれを邪魔しようとバリケードを作ったりしているのですね。
　受精でできた胚は細胞のかたまりであり、特別な扱いは必要ないと、ほとんどの先端の分子生物学者は主張するようですが、その胚は人間になる可能性があるわけですから、やはりある程度は尊重されるべきでしょう。