気功サロン推薦図書（73）
　　「人がヒトをデザインする」　小坂洋右著

　植物や動物の世界では、遺伝子組み換えなど遺伝子を操作する技術によって、その性質を改良することは当たり前になっています。しかしその技術をそのままヒトに応用してよいのでしょうか。
　その問題についてのいろいろな意見やその危険性について本書は警告を発しているのです。
　ヒトの遺伝子を操作する場合の根拠には治療と改良があります。治療と改良の違いの例について、「偶然から選択へ」という本の著者アレン・ブキャナンは二人の少年の例を挙げています。
　「ジョニーは11歳の少年。脳腫瘍の結果、成長ホルモンが不足し、治療がなされなければ成人になっても160ｃｍの背丈しか見込めない」
　「ビリーは11歳の少年。成長ホルモンは正常だが、両親ともに背が低く、成人になっても160ｃｍの背丈しか見込めない」
　遺伝子操作で対処する時、前者が治療で後者が改良です。治療のために遺伝子を扱うことは多くの人の賛同を得られるのではないでしょうか。しかし、後者の改良の場合はどうでしょうか。しかも治療と改良の間は複雑で、どちらとも言えないような問題もはらんでいるのです。
　頭脳明晰で健康な男性の精子を保管する精子バンクは現実に存在し、その精子により体外受精する女性もいます。両親が生まれてくる子に対し、頭が良く、健康、容姿端麗を望むのは当然かも知れません。だからと言って、その望みを叶えるために遺伝子操作をする、言い換えればヒトをデザインすることが許されるのでしょうか。
　現代はヒトゲノムも解読され、人間の頭脳や肉体、能力、性格までの基本となる遺伝子が分かり、それを操作する技術もできています。その技術をどう使うのかーーーそれは人類の未来を決める重要な問題でもあるのです。