「タバコは認知症を予防する」か？

　ある一つのデータから、すぐに結論を出すことが危険な場合があります。科学的に正しい結論を出すためには、そのデータの周辺にあるものを客観的に見ていかなくてはなりません。そうでないと、間違った結論を出してしまうのです。その良い例が表題の「タバコは認知症を予防する」です。

　この表題だけを見れば、愛煙家の人たちは喜ぶかも知れません。しかし、世の中そう甘くはないのですね。実は、この表題の元になったデータがあります。それは認知症患者の喫煙率は、一般人のそれよりも低いというものです。

　このデータは間違ってはいません。しかし、だから「タバコは認知症の予防になる」と早まって結論を出すことはできないのです。

　もう一つのデータがあります。これはアメリカでの研究ですが、タバコを毎日2箱以上吸う人は、吸わない人と比べて、平均寿命が6歳低いということです。また認知症は70歳代、80歳代と高齢になってから発症することが多いのです。その他、タバコは肺がんだけでなく、いろいろながんの発症リスクを高めることも分かっています。つまりこれらの事から言えるのは、多くの喫煙者は認知症になる前に死んでしまう、ということなのです。だから認知症患者の喫煙率は低いのですね。

　う～ん、なんだかんだ言っても、やはりタバコは健康には良くないということなのでしょう。