気功サロン推薦図書（78）
　　リチャード・ドーキンス著「神は妄想である」

　「利己的な遺伝子」で世間を驚かせた著者が、またまた挑戦的なタイトルの本を書いてくれました。
　著者は以前より自身を無神論者と名乗っています。日本は世界でも珍しい無宗教の国（日常生活において宗教の影響が少ない国）だと私は思っていますが、キリスト教の影響の強い欧米諸国において無神論者を名乗ることは、とても勇気のいることです。
　ましてやイスラム教の影響力の強い国においては命の危険を冒すことにもなるでしょう。

　宗教は、それを人生上の心の支えとしてとらえる分には善でしょうが、絶対的にその教義が正しいと考える原理主義に陥ると、世界を悲劇にしかねないという、悪の顔を持っていることを知らなければなりません。
　本書で著者が主張しているように、宗教のない世界を想像してみてはどうでしょうか。
　宗教が絡んだ争いや戦争は昔から数限りなくありました。9.11の世界貿易センターへの自爆テロをはじめ、十字軍や魔女狩り、北アイルランド紛争、ロンドン同時多発テロ、同じイスラム教でもシーア派とスンニ派の戦いなどたくさんあります。
　他にもバーミヤンの仏像を破壊したタリバン、不倫しただけで自分の娘を殺してしまう名誉殺人、妊娠中絶に反対するあまり、中絶する医師を殺してしまう狂信的なキリスト教徒など枚挙にいとまがありません。
　宗教は科学ではありません。宗教においては何が正しいかは問題にはならないのです。正しいものを求めるから自分以外の宗教は邪教となり、邪教を滅ぼすことが正義だと勘違いしてしまうのです。
　神がいるかどうかは分かりません。それは「ある」対象ではなく「信じる」対象だからです。信じる自由とともに信じない自由も私たちは持っているはずです。お互いがその自由を尊重すれば、世界はもっと平和になっていくのではないでしょうか。