気功サロン推薦図書（80）

　気功サロン推薦図書（80）　

　　　「わかる唯識」　岡野守也著

　心というものに意識と無意識という二重性を考えた心理学者、精神分析学者はフロイトですが、その1000年以上前に、仏教では唯識学という学派が同様なことを述べているのです。

　ただ唯識学の場合はフロイトと違って二重ではなく、心は三重の構造をしていると主張しているのですが・・・。それは意識とマナ識、そしてアラヤ識です。

　マナ識とは、常に自分を中心にとらえ、自分とそれ以外を分けて考えて自分にこだわってしまう心を言います。その奥に潜んでいるアラヤ識は、意識やマナ識から生まれた考えが無意識のうちに貯蔵される場所で、善悪などの判断はしません。

　そしてアラヤ識は、その考えや願望が習熟すると、その実現に向かって動き出すのです。

　本屋さんに行くと「成功哲学」といわれるコーナーがあります。「あなたの望みはこうすれば叶えられる」といったようなタイトルの本が並んでいます。ナポレオン・ヒルやジョセフ・マーフィーなどが主に主張しているのですが、このメカニズムにはみな共通したものがあります。

　自分の望みが叶ったという状況をありありとイメージすることなのです。そのイメージが無意識にインプットされると、あとでアウトプットして出てくる、という考えなのです。

　唯識学的に言うならば、この場合の無意識はアラヤ識に該当するでしょう。今から1000年以上前に、仏教ではこのような哲学が存在していたことに驚きを禁じえません。

　私は特に仏教徒というわけではありませんが、世の中にたくさんある宗教の中でも、人間の心の奥底に鋭く切り込んだのは仏教が一番ではないかと思っています。