怪しげな気功

　気功というと皆様、どのような印象をお持ちでしょうか。どこか非科学的で怪しげなもの、という感覚を持っている方もいます。

　気功とは中国4000年の長い歴史を持つ健身、健康、養生法です。気功とひとくくりに言っても、それは大きく二つに分けられます。自分の肉体を鍛えたり、武道として氣のエネルギーを使う硬気功（武術気功）と、自分の健康や病気治療に氣を使う軟気功（医療気功）です。この軟気功も内気功と外気功に分けられます。

　内気功は自分の健康や長寿を目的とするものですが、これも大きく動功（動きのある功法）と静功（動きのない功法）に分かれます。動功はたくさんあり、太極拳や形意拳、大気拳、八段錦、小周天、香功、禅密功などその種類は数えきれないくらいにあります。皆様、気功というとこの動功を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。一方、静功は動きがないので、瞑想になります。瞑想しながら氣を巡らせるわけですが、気功を広い意味で使えば、座禅なども気功の一種と言えるわけです。

　一方外気功は、自分以外の人やペットなどに氣を発するものです。気功師と言われる人が患者に気を発し、病気を治すような場面をテレビなどで見たことがある人は多いのではないでしょうか。

　実は、このブログのタイトルである怪しげな気功は、この外気功に対しての印象ではないでしょうか。内気功の動功は、体操やストレッチ運動、ヨガなどと共通するものを持っています。これらはとてもポピュラーですし、怪しげと感じる人は少ないでしょう。また静功は瞑想や座禅ですから愛好者も多く、広く受け入れられていると思います。これら私たちに広く受け入れられている健康法に対しては、怪しいという疑問を持つ人は少ないと思います。

　それに対して外気功は、他人の病気に対処するという意味では医療と同じですし、氣をコントロールする気功師は、西洋医療の医者と同じ扱いになるのです。しかし医者になるためには難しい国家試験に合格しなければなりませんが、気功師の場合はそのような制約がないため、極端な場合は、誰でも気功師を名乗れる状況にあるわけです。ここに怪しげな気功師や気功が存在できる余地が出てきてしまうわけです。

　もちろん外気功を担当している気功師には真面目な方もたくさんいます。ここで私たちは、その気功が怪しいのかどうかを判断しなければなりません。その判断材料はいくつかありますので、ここに紹介したいと思います。

　まず、気功の効果には科学的根拠が乏しいのですが、いくつか科学的にその効果を証明している実験があります。まず、気功を受けると血流が良くなり、体温が上昇することが町好雄・東京電機大学の教授によって明らかになっています。また気功師と言われる人の手からは脈動する赤外線も観測されています。これらの気功効果の科学的根拠を説明できるか、というのが第一のポイントです。つまり、患者さんに気功の有効性を科学的に説明できるか、ということなのです。

　第二のポイントは宗教と結びついていないということです。第一のポイントでは、怪しいという疑念を払しょくするために科学的なエビデンスの重要性を指摘しましたが、宗教と科学は本質的に異なっているからです。科学は正解を追究するものですが、宗教は信じる世界です。だから、気功が何か神の力であるかのように宣伝されてしまうことがあるのです。こうなると、気功は医療というよりも祈祷に近いものになってしまいます。つまり、人をだますような怪しいものが入ってしまう余地が出てきてしまうのです。

　第三のポイントは、「すぐに治る」とか「絶対治る」など安易な回答をしないことです。人間の身体は非常に複雑であるため、安請け合いすることは相手を騙すことにもつながりかねないため、非常に危険なのです。

　第四のポイントは料金です。施術料金があまりにも高い所は注意したほうがいいでしょう。

　そこが怪しいかまともかの判断の第五のポイントは、ここが一番大事かも知れませんが、気功師がどのような信念で営業しているか、という点です。単なる金儲けで仕事をしているのか、それとも世のため人のためという社会的な存在意義を持って仕事に従事しているのか、言い換えれば、理念や哲学があるのかないのか、そこがもっとも大事なポイントなのです。

　気功は残念ながらまだ科学的根拠が乏しいため、いろいろ怪しげなものも入ってくる余地があるのですが、しっかりとこの五つのポイントを把握して気功を学んでほしいと思っています。