私たちは普通、脳が体を支配していると思っています。

つまり、神経という道を通って、脳から体に向かう一方通行のイメージです。

もちろん脳が体の各部分を動かしているわけですから、この方向は確かに存在します。

 

しかし、実は脳と体の関係はそれだけではありません。

体から逆に脳へ行く方向の流れがあるのです。

リハビリというのは、このカラクリを利用した方法です。

 

脳梗塞などで、体のある部分を動かす神経細胞が死んでしまったとします。

この時点では、この人はその部分を動かそうとしてもできません。

神経が死滅してしまったために、体のその部分への指令が行かないからです。

それでも、他の人の援助を受けてでも、とにかくその部分を動かしてみる。

それは大変な苦痛を伴いますが、そのように無理にでも体を動かしていると、

やがて脳がその動きに呼応するかのごとく、その部分を動かす神経細胞のネットワークが新たに生まれてくるのです。

 

ピアノなどの楽器演奏や車の運転、スポーツなどの運動もすべてそうです。

最初は上手にできなくても、何回も練習することで、

その部分を担当する脳の神経細胞が活性化し、やがて上手に行えるようになるのです。

脳が体を支配しているが、体も脳を支配しているーーーこの二つは相互関係なのです。