気功サロン推薦図書（32）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　「その科学が成功を決める」　リチャード・ワイズマン著

　著者のリチャード・ワイズマンはイギリスのハートフォードシャー大学の心理学教授です。
　私たちは普通、世間的な常識というか自分なりの思い込みを持っているものです。たとえば、子供はほめて育てろ、とか、宝くじに当たった人は幸せになれる、などです。
　でも本当にそうでしょうか？　著者はそれらを科学的に検証しています。科学的というのは、先入観を排し、データに基づいて客観的に検証するという意味です。そうすると、今までの私たちの思い込みが間違っていた、というケースが多々あるのではないでしょうか。
　上記の例で言うと、ただ子供をほめて育てればいいというものではないようです。ほめて育てられた子は失敗を恐れるようになるのだとか。基本的にほめるのはいいことですが、その場合は結果ではなく、過程、つまりその人の努力をほめるのが良いそうです。
　また宝くじについてですが、当たった人が当たらなかった人より幸せ、ということはなかったそうです。それどころか、宝くじに当たった人にくらべ、当たらなかった人のほうが、日々の単純な事柄に喜びを見いだす度合いが高かった、という結果が得られたのです。

　私が本書を読んで面白いと思った記述がありますので紹介致します。それは「しあわせはお金で買える？」という題についての実験結果です。
　お金というのは使って初めて、その価値を実感できるものですが、使い方には大きく分けて二つあります。「所有」と「体験」です。
　所有というのは何か欲しいものにお金を使うことです。前からほしいと思っていた洋服やバッグ、カメラやアイフォン、高額なものでは車や家などがあるでしょう。
　また体験にお金を使う例の代表格は旅行でしょう。その他、何かのイベント、コンサート、映画、美味しい食事、気の置けない仲間との飲み会などです。
　さて、所有と体験、どちらにお金を使ったほうが幸福感を得られるのでしょうか？
　心理学者のリーフ・ヴァン・ボーヴェンとトマス・ギロヴィッチの実験によると、短期的と長期的な幸福感の両方で、体験を買うほうが品物を買うよりも、人の気分を良くするという結果が出たそうです。
　ほしい品物を手に入れた当初は、ワクワクして嬉しい気分でしょうが、人はその状態に慣れてしまうと、それが当たり前となり、当初の幸福感は薄れてしまうのではないでしょうか。
　それに比べて、幸せな体験は思い出として残るので、いつまでも良い気分を味わえるのかも知れません。