気功サロン推薦図書（75）
　　「生命に仕組まれた遺伝子のいたずら」　石浦章一著

　著者の石浦章一氏は東京大学大学院の教授で理学博士です。本書は氏が行なった大変人気のある東大での講義を書き記したものです。そのため話し言葉ですので、大変わかりやすい内容になっています。
　本書では遺伝子に関し、病気や体質、性格、性別、寿命、脳との関係について、幅広く講義しています。
　その中で、人類が過去に行なった優生学の危険について講義した部分があるので紹介いたします。
　優生学はヒトラーによるユダヤ人虐殺の学問的根拠にもなった危険な思想でした。当時は遺伝的な病気をもっている人や精神疾患の人、また反社会的な犯罪者などは、悪い遺伝子をもっているからだと考えられていました。
　だから良い社会をつくるためには、このような悪い遺伝子を持つ人には子を作らないよう断種するという歴史的事実があったのです。日本でもハンセン病に対する断種や隔離政策がとられましたね。
　この考えは人種にも適用され、劣等な民族は廃絶しなければならないという差別につながったわけです。
　
　さて、同じ優生学という名がついても、リベラル優生学というのがあります。これはかなりの人の賛同を得られているのです。
　優生学が危険なのは、それを国家が管理、強制するからで、この国家権力の及ばない部分での優生学は、それを望む人がいる以上、それを科学が叶えるのは問題ないと考えるわけです。
　たとえば親なら誰でも、自分の子が頭脳明晰、健康で才能にあふれ、しかも容姿端麗で生まれてきてほしいと願うものでしょう。遺伝子操作をして、その願いを叶えることができるならば、しかも国家の介入がなく、個人の自由の裁量でできるなら、なんら問題はないと考えるわけです。
　でもこのような改良にはお金もかかるし、それが財政的にできない人もたくさんいるわけで、そうなると結局、金があるかないかで区別されてしまうーーーそんな社会がはたしていいのかどうか、慎重に考える必要があるでしょう。