「いいかげん」というと、悪い意味で使われることが多いようです。

「アイツはいいかげんなヤツだ」とは、無責任でチャランポランな人を想像させます。

しかしこの言葉は、そんな悪い意味ではなく、本来はもっと良い意味だったようです。

 

この語源に関して、こんな話を聞いたことがあります。

ご主人が風呂に入っている時、薪で風呂を沸かしていた使用人が尋ねます。

「湯の加減はどうでしょうか？」、それに応えて主人が言います。「ああ、いい加減だ」。

つまり熱過ぎず、ぬる過ぎず、ちょうど良い湯加減だというわけです。

 

世の中の常として、作用があれば反作用があります。

よく効く薬でも、使い方によっては副作用が出ます。

一長一短という言葉がありますが、どんなものにもメリットとデメリットがあるのです。

いや、別の言い方をすると、短所と思われていたものも、別の角度から見れば長所になるし、

長所も見方を変えれば短所になる。世の中はそういうものだと思うのです。

だから、ある一面だけを見て判断することはできません。

 

中国医学では、陰と陽の相対立する概念で世界は成り立っていると説きます。

その陰と陽のバランスが崩れると病気になると言うのです。

陰と陽のバランスを常に考える。片面だけ見ないで、両方を見る。

そのような客観的な見方が「いいかげん」に通じるのだと私は思っています。