私たちは自分の体を見て、ただ一つの命で構成されていると思いがちです。

いや私たちだけでなく、まわりの動物たちに対しても、その命は一つと考えがちです。

でも体の中をもっと深く考察すれば、たくさんの命から成り立っていることが分かります。

人体は約60兆個の細胞でできていますが、この細胞一つ一つが生きているではないですか。

生殖細胞の卵子や精子を考えれば、このことは容易に理解できます。

受精を目指し、一つの卵子に向かって、何千万個の精子が泳いで行くのです。

また私たちの体には、多くの微生物（細菌や原虫など）が住んでいます。

皮膚には皮膚常在菌が、口腔や膣にも多くの細菌が潜んでいます。

胃にはヘリコバクター・ピロリ菌が、60歳以上の6割を超える人の胃にありますし、

小腸から大腸にかけては、約100兆個もの細菌が潜んでいると言われています。

小腸には主に乳酸菌が、大腸には善玉菌のビフィズス菌や悪玉菌のウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌がいます。

これらの微生物は、私たちが健康に生活する上でなくてはならないものなのです。

胃炎や胃がんの原因とも言われているヘリコバクター・ピロリ菌でさえ、

胃酸を中和し、逆流性食道炎を防ぐというメリットがあることが近年指摘されています。

このように考えますと、一つの人体も多くの命に支えられて生きていけるということが分かります。