身体の徐々の変化は気づきにくい

　何事もそうですが、急激に変化するものは気づきやすいが、ゆっくりと徐々に変わるものには鈍感になるようです。たとえば老化。日々肌は衰え、シワは増え、みずみずしさは失われ、姿勢も変化していきますが、これらの変化はゆっくりでわずかなので、そこに注意を向けることはあまりありません。

　タバコが健康に良くないのは何十年も前から言われていました。私の体験ですが、50年も前にヨーロッパを旅した時、場所は忘れましたが、橋の欄干にタバコをくわえたドクロの模型がいくつも飾ってありました。人々にタバコを吸うと早死にしますよというメッセージなのでしょうが、日本ではちょっとないような強烈な表現なので、よく覚えています。

　私はタバコを吸いませんが、愛煙家の気持ちが分からないわけではありません。いままで何人もの愛煙家と付き合ってきましたが、食後の一服はとてもおいしいようですね。

　さて、タバコの害は彼らも理解しています。でも健康への害といってもそれは急激なものではないので、ついつい吸ってしまうということなのでしょう。

　タバコとがんの関係についてはいろいろ言われています。肺がんの原因はいろいろありますが、なんといってもタバコがその第一と言えるでしょう。タバコには40種類以上の発がん物質が含まれているのです。

　タバコは肺がんの第一原因ですが、実はタバコが関係するのは肺がんだけではありません。口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、膀胱がん、すい臓がん、腎臓がん、胃がんなど多岐にわたります。

　またタバコが問題なのは、がん発生に関して相乗効果を持っているということです。他の発がん物質と協力する形でがんの発生を高めてしまうのです。たとえばタバコと酒、タバコとアスベスト、タバコと大気汚染、タバコと紫外線や放射線というように、タバコが絡むと単独の場合よりもがんの発生を高めてしまうのです。