近代科学の父と言われたデカルトは心身二元論を説きました。

これは、心（目に見えないもの）と体（目に見えるもの）は全く別の機序で成り立っている、という主張です。

それ以前の中世ヨーロッパ社会では、この二つは混然一体となっていて、

本来、目に見えない心を探求すべき宗教（キリスト教）の力が大変強く、

目に見えるものを探求している医学や生物学、物理学といった自然科学の分野にまで口をはさんでいた結果、

これらの自然科学はこの時期、ほとんど進歩しなかったのです。

その良い例が天動説で、今ではこの説は間違っている（地動説が正しい）ことは常識ですが、

中世では、地動説を主張したガリレオ・ガリレイが宗教裁判にかけられ幽閉されてしまったように、

自然科学が正しく前に進めないような状態だったのです。

その後、デカルトの登場によって、宗教が自然科学の分野にあまり口をはさまなくなり、

自然科学が急速に進化していったわけです。

ところが皮肉なことに、心と体は別物と主張したデカルトの意に反し、

自然科学が発達して、心と体の関係が徐々に明らかになった結果、

この二つには密接なつながりがあることが分かってきたのです。

「病は気から」という言葉がありますが、これは精神神経免疫学によって科学的に証明されています。

心の負の状態（苦しみや不安、恐怖といったストレス）はさまざまな病気の原因になるのです。

逆に心の正の状態（笑いのある楽しい生活）は免疫力や自己治癒力を高め、

病気の予防や撃退に大いに貢献するのです。

健康を維持するためには、食事や運動、睡眠などに気を使うと同時に、

ストレスを溜めず、笑いのある生活を心がけることが大切でしょう。