気功サロン推薦図書（48）
　　「死の起源　遺伝子からの問いかけ」　田沼靖一著

　私たちの命、いや人間だけでなく、微生物を除いたあらゆる生物種の命を考えた時、とても不思議な感覚を覚えるのです。
　というのは、イヌやネコでも鳥でも虫でも、いや花や木などの植物でも、命というとその個体だけの一つの命を考えます。しかし、微生物などの単細胞生物ではなく、多細胞生物の場合、たくさんの細胞により体が構成されているわけです。そして、この一つ一つの細胞は生きているのです。ヒトの場合、約60兆個の細胞からできているわけで、60兆の命に支えられているのですね。
　そしてこれらの細胞たちは、死と生をくり返しているのです。細胞の死は遺伝子によってコントロールされ、一部を除いて、古くなった細胞は死にます。これをアポトーシスと呼びます。いわば自然死ですね。
　細胞の死にはもう一つあって、ネクローシスと呼ばれるもので、これは突然死に当たります。たとえば火傷して皮膚がただれれば、その皮膚の細胞は死んでしまいます。これが突然死です。
　このような突然死は例外ですが、自然死で考えますと、私たち人間の場合、1日で約40億の細胞が死に、新たにそれだけの細胞が生まれていることになります。ヒトの皮膚は数週間で入れ替わり、ヒトの体全体で見ますと、1年で98％は入れ替わってしまうのです。でも、固体としての一つの命、私たちのアイデンティティーは変わらないですね。これも遺伝子によってコントロールされている証拠でしょう。
　アポトーシス（自然死）は、固体の命を維持するために必要なものなのです。ちなみにガン細胞というのは、このアポトーシスができなくなり、無限に増殖してしまい、組織のシステムを破壊してしまう細胞なのです。